主任司祭 西川 哲彌(にしかわ てつや)

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二階の自室にいると、下から「神父さーん、神父さーん」という声が聞こえてきました。「はーい」と言って下に降りると、きんこさんがいました。きんこさんは、田中さんが苗字で金子が名前です。もちろん、ちゃんと呼ぶと「田中さん」なのでしょうが、親しさも込めて皆さん「きんこさん」と呼んでいます。私も通常、「きんこさん」と呼んでいます。

金子さんは、私の前任の伊藤淳神父さんからカトリック要理を学び洗礼を受けられました。受付ボランテアを隔週の土曜日、きちんと果たしておられます。

そのきんこさんが、時々思い出したように、「神父さーん」と呼んで、珍しいものを持ってきてくださるのです。食べ物なら、カツオやマグロのカマ(頭と胴体の間の骨)を煮たもの、植物なら今回紹介する珍しい花の球根等々です。

「神父さん、珍しい花の球根をいただいたんですけど、教会の花壇に植えてみませんか」という電話がありました。ご自宅の花壇が狭くて植えるのが難しい、だから、教会の花壇にどうかということでした。「わかりました。いただきます」と返事をして、さほど時間を置かないうちにきんこさんが来てくださいました。

小さなビニール袋に入っていたのは、イカのするめを1センチの幅で裂いたような形で、球根という名からイメージしにくいものが、7つありました。「これが説明書です」と言って一枚の素朴なプリントをいただきました。「今(5月)植えておくと8月には開花すると書いてありますね」と、きんこさんが説明してくださいました。

きんこさんが帰られてから、プリントを丁寧に読みました。花の名前は、ファイヤーリリー(グロリオサ)といい、イヌサフラン科の花でユニークな花形と目を惹く色彩が特徴的と書いてありました。

翌々日、早速、ルルドのマリア様の花壇の右側に植えました。わかりやすいように、横一列に土を掘って30㎝間隔で埋めて土をかぶせておきました。果たして芽をだすのか、正直、半信半疑の気持ちでした。

ある朝、庭を一回りして、ルルドあたりに来た時、なんだか一本の細い、緑の茎がつーんと伸びているではないですか。しっかり見ると周りに同じような茎が数本出ています。数えると6本。ファイヤーリリーです。7本植えて6本出たということでしょう。ちょっと強い風が吹いたら、折れて地面に倒れそうな茎です。任せておけとばかりに、緑のプラスチック支柱を持ってきて縛り、支えをしてあげました。実は、細い茎が出てきたなと気がついたのは先週のことで、数日しか経っていないのに、最長で1mくらいになっています。

花の説明書に、イヌサフラン科となっています。サフランといえば、花を乾燥させて、鎮静剤のような薬物を取り出して使われている用途があります。説明書の端に、「有毒成分を含みますので、お子様やペットが届かない所で保管、栽培しましょう。」と書いてありました。茎や花を直接口にしないようにということでしょうか。

名前が「ファイヤーリリー」となっているのは、どこか百合系の要素が入っているからかもしれません。葉っぱも、百合のようのような感じがします。ところが、よく見ると、葉っぱの先がつるのように伸びていて、他の花に絡んでいるのです。びっくりしました。こんなの、初めてです。ともかく、開花期は、8月から9月となっているので、もうすぐです。

ところで、話は変わります。きんこさんの家には、玄関先に、鉢やプランターがびっしりと置かれていて、とても賑やかです。ある日、自転車で教会に帰る途中ちょっと寄りました。ちょっと寄るだけと思っていたら、持って行きなさいと言って、数個の鉢。もちろん、それぞれ木や花がよく育っているものばかりでした。そしてその時、悲しい話も聞きました。「黙って持って行く人がいて、困っているんですよ」「それもいいのを選んで」「それは、どろぼう行為でしょう」と聞くと「そうですよ」という返事。「売ったり、捨てたりしないで、大事に育ててくれさえすればいいと思っていますよ。盗られるのは夜ですから、仕方がありません。見張っているわけには行かないですから」

「ごミサの後、お一人10本の草取りお願いします」との声かけで、つい草に覆われてしまう教会の庭が、すっきりしてきました。一人で100本取るより、100人が1本取る方がずっと効果的です。学校や団地は業者が入っています。教会の隣の団地も、年に二回、根こそぎ刈り取ります。そして半年経てば、同じように伸びます。そしてまたある日、業者が入って刈り取ります。せめて、団地の中の子どもたちが遊ぶ遊園地の草取りだけでも子供に任せたらと思いました。草取りは、いろんなことを学ばせるチャンスを与えてくれます。

西川神父絵