主任司祭 西川 哲彌(にしかわ てつや)

IMG_2082 コピー

2月15日、その日は雨で気温も低く、痛い足を引きずって、御茶ノ水までの二時間は遠い道のりでした。途中何度か電話を入れて、予約をキャンセルしようかと思いました。しかし、自分にとって大事な相談をする日でしたから、一歩一歩踏みしめるようにバス停まで歩きました。この一年、20回近く通った道です。

お茶の水整形外科は、ニコライ堂のすぐ横にあり、まるで同じ建物にいるような錯覚を覚えるほどです。駅から降りる坂道を数分歩いたところです。足が痛くなければ、素敵な散歩道です。

約束の2時前に着きましたが、待合室はいっぱいでした。30分ほど待って榎本先生の診察室に入りました。前回「もし手術をする気持ちがおありになれば、当院が提携している医院の外科医が水曜日に来ますから相談してください。」とのお話でした。私は、決心がつかず、あえて月曜日に先生に時間を取っていただいたのです。

先生は、「私の後輩が、東村山の多摩北部医療センターにいますから、相談してみてください」とあらかじめ用意してくださっていた紹介状と私に関するデータの入った資料を渡し、「私の後輩ですが、信頼できる医師です。安心して相談してみてください。」とおっしゃいました。木曜日しか来られないということでした。

三日後、車で多摩北部医療センターに行き、初診の手続きを済ませて整形外科の受付の前に座りました。待つこと約一時間して名前が呼ばれ、診察室に入り、朱先生の前に座りました。データを見ながら、「微妙なところですね、痛いのを騙しすかししながら、今まで通りやってゆくか、手術して痛みから解放されるか、どちらかですね。ともかく、帰ってお身内の方と相談して、また来てください。」とおっしゃいました。

多摩北部医療センターの大きな待合室に座って、ほっとしながら祈りました。祈りに没頭していた時、今年の箱根駅伝の中継で、伴走していた監督の「男だろー」という声が話題になりましたが、実は同じ声が私の胸に響いたのです。確か、女性の声でした。

「そうだな、迷っている時ではない、手術に呼ばれているんだ」と思って、再度、整形外科の受付に戻リました。朝ほどではありませんがまだ何人かの方々が座って呼ばれるのを待っていました。私の番が来て、先生の前に座った時、「あれっ。さっきの西川さんですね。どうかされましたか」と訊かれ、即座に「手術、お願いします」と申し上げました。先生は、少し顔を崩して「わかりました。そうしましょう」と答えられました。

それからは、「最短で行っても、3月16日の火曜日です。15日に、入院してください。」とおっしゃいました。私はとっさに、術後、聖週間までに2週間しかない、大変だー、と思って、「先生、申し訳ありませんが、少し早くしてはいけませんか」と申し上げました。「無理です。新型コロナで病院が人手不足になっているんです。」とのことでした。「わかりました」しかありません。

それから約二時間半、いろんな検査と入院上の指示が山のようにあって、2時近くまで「はい、はい、はい」を言い続けて検査や、面接に応じました。最後の面接で、とんでもないことがありました。それは麻酔科の要求で、髭を剃るという一項があったのです。「髭を剃るといことは、私のこの顔の髭を剃れということですか」と、聞き直しました。「そうです。全部剃っていただくということです。」私の40年余りの司祭生活で、シンボルマークにもなっている髭を、足の膝の手術のために剃る。ちょっと待ってください。」「全身麻酔ですから仕方ありません。今、麻酔部長に聞いてみます。・・・「やっぱりダメでした。手術を取るか、そのお髭を取るかです。」「ウーーーー。剃ります。」 準備の全行程を終了し、安全運転で教会に帰ってきました。臨時に受付をお願いしていた福井さんの顔を見た時、ほっとしました。

実際、このまま行くか、あっさり手術の道に進むか迷っていました。信徒の方がた、司祭の何人かの方々で、そのような手術をされた方々がおられます。技術は最高段階に入っていても、うまくいっていない方も何人かおられます。ある神父さんは、何年か経って再手術をしなければならなくなっておられます。できれば手術をしないでなんとかならないかと思っていました。

大げさかもしれませんが、これから何年も司祭職をはたしてゆかねばなりません。目と足は、使えるようにしておかねばならないと常に思っているので、手術をためらってきたのです。全ては恵みの種、恵みの印と思っているので、少々のことは我慢するという愚かな信念も持っています。しかし、今回は、大腿骨と脛骨が膝でぶっつかる痛みに約1年間、苛(さいな)まれ、白旗を掲げてしまいました。しばらく教会を留守にしてご迷惑をおかけします。申し訳ありません。

795316b92fc766b0181f6fef074f03fa-2