主任司祭 西川 哲彌(にしかわ てつや)

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先週月曜日の夕刊のトップニュースに「ミャンマーでクーデター」と大きく出ていて、頭の中が一瞬、真っ白になるほど、驚きました。ミャンマーは、ゆっくりながら着実に民主化が進んでいると信じていたからです。

実は、6年前の2月、Tさん(浅草教会)のご好意で、約二週間あまり、前首都であるヤンゴンから、新首都ネピドー、北に位置するマンダレーまでくまなく見て回りました。30年ほど前に見たミャンマーが思い出せないほど、進化していました。ヤンゴンの旧市内から西方にあたる田園地帯、つまり海側から見て、ヤンゴン川の右側が、地図が変わるほど開発されて、大きな工業団地になり、そこに何十いや何百の外国企業が進出して工場建設の最中でした。もちろん日本の企業も相当入っていました。ヤンゴン川に、日本の資金で大きな橋も建設され、現在完成して使われているとの話でした。

クーデターが発生して軍部が政権を掌握したとの新聞報道で、その理由に昨年の総選挙が槍玉に上がっていました。軍の言い分は、「選挙の不正があったこと、それが正されないまま国会が開催されようとしている。それを止めるために武力を行使した」です。これは単なる言い掛かりだと直感しました。というのは、昨年11月に行われた総選挙には、公平な立場で選挙を見守るための国際監視団が付いていたし、違反防止のための国内の監視団も見張っていたはずです。それに、アウンサン・スーチーさん率いるNLD(国民民主連盟)も、勝敗は五分五分と見ていたにもかかわらず、開票の結果は、五分五分どころか、NLDが8割の議席を獲得したのです。これには、軍部も驚いたことでしょう。

新聞の記事によると、スーチーさんが内心あてにしている勢力は仏教教団だそうです。今は無言を保っていますが、人口の95パーセントを占める勢力です。この仏教界が民主化運動にどういう立場に立つかが、これからのミャンマー民主化の命運を握っていると言っても過言ではありません。

カトリック教会の信徒は、全人口に占める比率はわずかです。ヤンゴンにかなりの信徒がいますが、主に、山岳地帯の少数民族に集中しています。それぞれ独自の言葉を話し、独特の文化があります。ですから、30年前に行った時、小神学校ではカレン語が使われ、中神学校、大神学校では英語で授業が行われていました。もちろん、主要な都市や町には教会がたっていますし、召命は、神学校が足りないくらいです。これからどう宣教してゆくか、大きな課題です。

さて、軍部と仏教界、この二つがミャンマーの国政を支えているのですが、ここ15年くらいは、やっと民主化の波がスーチーさんのリーダーシップのもとにミャンマーを変えてゆくきっかけを作ってきました。スーチーさんの人気のもとは、お父さんが「ビルマ独立の父」と言われるアウンサン将軍の娘であることにあります。お父さんのお墓が、ヤンゴンの大きな湖のほとりにありますが、今でも墓前に花が絶えたことないと言われていますが、その通りでした。スーチーさんはすでに75歳。願わくは、お元気なうちに民主化運動をゆるぎないものとして、次期指導者を養成し、バトンタッチしていただきたい。もちろん、若いリーダーがたくさんいます。まさに発展途上国という言葉が当てはまります。

さてさて、今さらながらという感じがしますが、なぜ、東京教区がミャンマーの教会に献金や祈りで援助をしているかは、ドイツのケルン教区の意思がきっかけになっています。第二次世界大戦で日本もドイツも敗戦国で破壊しつくされました。日本も、東京の空襲で約十万人の焼死者を出し、写真で見るだけですけど、江東区や台東区を中心に、焼け野原になりました。と同じようにドイツも、いたるところ、瓦礫の山になったようです。聖堂は、壁が残っているので、そのまま使えるような感じがしていても、屋根はなく、中はやはり瓦礫に埋もれていました。打ちひしがれて、悲嘆に沈んでいる信徒に、「私たちに何かできることをしよう」と呼びかけた方がいました。ケルン教区のフリングス枢機卿その人です。援助先に東京が選ばれ、小さなお金が募金箱に入れられるようになりました。ケルンの信徒は、与える喜びと、ケルン教区の再建という実りを得たのです。そのお金で東京教区の聖堂が幾つも建ちました。(清瀬も。)

援助が25年経った時、ケルンからヘフナー枢機卿様をお招きして、お返しとしてケルン教区のため何かさせてくださいと申し上げたところ、皆が、驚くような答えが返ってきました。「とんでもない、お礼を言いたいのは私たちの方です。もしよかったら、アジアのある地域の教会を助けて差し上げてください」と言われました。そして、援助先に選ばれたのがミャンマーでした。毎年1月の第3日曜日はケルン教区の信徒のため、11月はミャンマー教会の召命のために祈りと献金をお願いしているのはそのためです。ミャンマーのために祈り、献金しましょう。

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