主任司祭 西川 哲彌(にしかわ てつや)

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先週、新型コロナ(含む変異型)の感染者数が、世界で一億人をこえた(ジョン・ホプキンス大学システム科学工学センター情報)とのことです。世界の57カ国で同じ変異型のウィルスが発生し、最大7割強い感染力で流行しているとのことです。いよいよ新型コロナの正体が見えてきた感じがします。小手先でなんとかなるとか、ワクチンが行き渡れば、たちまちにして、コロナは沈んでゆくというようなものではないことが身近なこととして理解されてきました。

米国の新大統領バイデン氏も、米国の全力を投じて立ち向かって行かねばならない第一の課題として、新型コロナ対策をあげました。武器を使って戦争をしているわけでもないのに、世界中で1日に約50万人の方々が感染死しているのが現実で、この課題抜きには一歩も前に進めません。

バイデン大統領の就任演説を新聞で読みました。「あなたたちは、国が自分に何かしてくれるより、自分が国に何ができるかを考えてください」と呼びかけたJFケネデイさんの就任演説での言葉が今でも語り継がれています。今回、バイデン大統領は、「今日は、民主主義の日だ」という言葉で始めました。そして「我々の民主主義は脆(もろ)いものだと改めて学んだ。しかし、民主主義は今、勝利したのだ」と宣言しました。二大政党の争いのように見えたが、どちらかの政党が勝ったのではなく、民主主義が勝ったのだと言い切ったのです。

今回の選挙は、国民がトランプ氏を選ぶかバイデン氏を選ぶかに関心が絞られていました。トランプ氏は前大統領選挙で「アメリカ・ファースト」を声高に表明し、「私は、なんでもアメリカが一番だと信じてきたが、今はそうではない。だからこれからは、すべてにおいて、アメリカを一番、世界中で一番の国にする。」と訴えたのです。「世界、いや、宇宙を、アメリカ中心に動くようにする」と言って選挙を戦い、まさかという選挙結果で大統領に就任したのです。米国伝統の民主主義はどこかに飛んで行ってしまいました。世界中がトランプさんのツイッターでかき回されました。

今回も接戦でしたが、僅差でバイデン氏が勝ちました。民主主義のルールです。一票でも多い方が勝つのです。トランプさんの気持ちは治まりません。自分を支持して投票した国民半分の意思を一人の政治家として実現するために、今から戦って行くと宣言しました。トランプさんは負けを認めません。これからも大統領戦は続行すると宣言した。だから人気は落ちません。そういう面からすると、米国は分断されています。この分断が、米国のみならず、これからの世界にどのように影響してくるかは、誰にもわかりません。決していいことではありません。一致を取り戻すために、相当の時間がかかることだけは確かです。

さて、バイデン新大統領は、早速、自分の政治理念に基づき、予想したような政策と人事を発表し実行に移しています。パリ協定復帰や、WHO(世界保健機関)からの脱退撤回を始め、黒人・アジア系の若いハリス副大統領に多くのことを相談し、意見を取り入れていることが伝えられています。これまでからすると信じられないことです。

就任演説で何回も出てきた言葉は「団結」でした。英語でユニティです。二大政党の一方がそっぽを向いていては政治になりません。米国は、何と言っても経済的にも軍事的にも大国であり、世界に与える影響力は大です。その大国が国内で二つに分かれていることは、大国としての存在意義が問われます。トランプさんが大きな票田としてきた白人中間労働者層は、選挙で残されたしこりをいつまでも捨てることはないでしょうし、個人的なファンも付いて行くでしょう。私たちは見守ってゆくだけです。

アメリカは、もともと、階級的支配構造で固められたヨーロッパから、自由を求めて移住してきた人々で成り立ってきた国です。フランス革命の大きなスローガンであった、自由・平等・博愛を建国の柱とし、リンカーン大統領が南北戦争の終決時にゲティスバーグで行った演説の一節「人民の、人民による、人民のための政治」実現を目指してきた国でもあります。つまり、民主主義の実現を目指している国と目(もく)されてきた国です。今回の大統領選挙は、その「民主主義の国」に?マークをつけてしまいました。ですから、バイデン新大統領は、「民主主義は勝利した」という代わりに「民主主義を取り戻そう」を呼びかけなければならないのです。

世界1の富国として、食べ物にも事欠く国や人々に、見返りを求めないで援助をする国になってゆく使命が課せられているのです。自国の利益を差し置いて、他国を助ける手本を示す国になってゆくことが、米国を一つにしてゆく道です。そこに、二分された米国の結束を取り戻す鍵が隠されていると思います。大きな課題を受けたバイデン新大統領は、78歳の超高齢者です。足元に気をつけて頑張ってください。と言う私も、バイデンさんと同い年なのです。ホント。

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